
みなさんこんにちは
湊かなえさんのデビュー作にして、第六回本屋大賞受賞のベストセラー作品、『告白』を読んだのでその感想です。
⚠ネタバレを含みます
告白/湊かなえ
あらすじ
一章からガッツリ引き込まれる
終業式を迎えた中学校のクラス。
主人公である女教師の森口が生徒達に話している場面から始まります。
生徒の質問や反応に対して森口は返答をしていますが、淡々と返していく森口の語りは独り言をただ教室という空間で呟いているような印象を受けました。
常に敬語を使っていることも無機質さを感じさせます。
学校をやめるので最後に聞いて欲しい話があると言って語り始める森口は、教師とはなんだろう?教師と生徒の信頼関係とは?という話をする。
ここまでの時点で、無機質さを感じる森口の語りに何か暗い影を感じ
「この後なんの話をするつもりなんだ?」といきなり引き込まれていました。
その後夫がHIVであること、夫の意思で離婚したこと、娘の愛美に愛情のすべてを注いでいた話しをした後にこの一文がきます。
「しかし愛美はもういません。」
娘さんがなくなってしまったから辞めるのか。と思っていると愛美さんがなくなるまでの経緯を話し初める。
プールで誤って足を滑らせてしまったことによる溺死、つまり事故だったと警察から判断された。
本当に事故であれば教員を続けていたかもしれない。
ならばなぜ辞職するのか?と、語りかけた後
「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです」
この一文にゾクッと来ました。
淡々と言葉を吐き続ける森口が淡々と告げる。まるで明日の天気は晴れです。とでも言うように熱量を感じさせない言葉でさらっと語るのです。
そして、話は変わり年齢制限についてどう思うか?という問いかけを突然します。
この、重たいことをサラッと言って、読者をえ?と感じさせた後にコロッと話が変わるところにも引きつけられていきます。
ボーとしていたら突然頬にナイフを突きつけられたような、全くの意識の外から触られるようなゾクッとする感覚を味わえる。
核心に近づいたと思ったら離れて、また徐々に核心に近づいていく。
周りの温度が少し下がったように感じながらもどんどんページを捲ってしまいます。
思春期の危うさ、人間の脆さに恐怖
第一章では森口が語りっていますが、2章ではクラスの女の子、3章では加害者の少年の姉。と、各章で話し手が変わっていきます。
2章で話す女の子がされたクラスからのいじめの話は、学校という閉鎖的なコミュニティの怖さに震える。
社会の法律ではなく、クラスの空気によってやっていいことやってはいけないことが決まる感じ。
人道的にあかんことでも軽々と飛び越えてやってしまうところに
イジメダメ絶対。
犯人Aの渡辺は母親の愛が欲しくて、認められたくて犯行に及んだのだと思います。
とにかく目立って話題になることによって母親の目にとまろうとしたAは、話題になる手段として犯罪を選んでしまいました。
行き過ぎた承認欲求によって、人を殺そうと考えたこと、その行為になんの後ろめたさや疑いを感じていないことに人間の脆さを感じました。
自分が当たり前だと思っていることは誰にとっても当たり前。
なんてことはまったくなく、今までの積み重ねて来たものが違うため、常識は非常に脆い人のモラルの上に成り立っていることを感じ怖くなりました。
人の考えている事はわからない
犯人B(下村)の母親から見た犯人Bは明らかにおかしくなっており、突拍子のない行動をしていました。
そのため、ワイもBの母親の日記を見ながら、コイツぁいかれてしまった。思って見ていた。
しかし、Bの語りのパートになったときに、突然丸坊主にした理由や、母親に警察に行こうよと甘えたような態度で繰り返していた理由を知り、なるほど。となります。
こんな考え方からあの狂ったような行動につながったのか...
母親の日記と、Bの語りが狂っていく人間を書くのがうまく、湊かなえさんやべえ...となりました。
読んでゾクっとしてほしい
文庫本は300pと長すぎず比較的短時間でサクッと読むことが出来ます。(ワイは4時間位でした)
読んだのは2度めだったのですが、読みながら おうふ... となっていました。
読み終わって楽しかったあ!!となる類の本ではありませんが、読後のズシッとした感じを味わいたい方はぜひ読んでみてください。